管理栄養士の山内です。梅雨空が続くと鬱陶しいと感じてしまうこともありますが、気持ちだけでも爽やかに過ごしたいなと思っています。
ただ、これから気温が高くなり湿度も増してくると食中毒の発生が心配されます。食中毒というと、レストランや旅館などの飲食店での食事が原因と思われがちですが、家庭の食事でも発生していますし、発生する危険性がたくさん潜んでいるんです。
家庭での発生では症状が軽かったり、「風邪や寝冷えかな?」と食中毒とは気づかれないこともあり、味、臭いに変化はなく、気づかずに食べてしまう…ということがあるので、きちんと予防しましょう。
食中毒の原因
食中毒を引き起こす原因は「細菌」「ウイルス」「自然毒」など様々ですが、梅雨から夏季は食中毒を引き起こす細菌が好む高温多湿の環境となり活発に増殖するため、細菌性の食中毒被害がニュースになることが多いです。
この細菌性の食中毒では、年間患者数の約65%が、6~9月に報告されているそうです。梅雨~夏の高温多湿の時期に多発するのは、カンピロバクターや腸管出血性大腸菌などが原因となる細菌性の食中毒です。冬(12月~3月)はノロウイルスなどのウイルス性の食中毒の発生が見られます。また、春や秋には、他の時期に比べて、自然毒による食中毒が多く発生します。
家庭での食中毒を防ぐポイント
家庭での食中毒を防ぐポイントは調理中だけでなく、食品の購入時や食後にもあります。普段の生活の中で意識を少し変えるだけで食中毒の発生を抑えることにつながります。
食品の購入
- 表示のある食品は、消費期限等を確認し、購入しましょう。
- 購入した食品は、肉汁や魚等の水分が漏れないようにビニール袋にそれぞれ分けて包み、持ち帰りましょう。気温の高い日は出来れば保冷剤や氷等と一緒に持ち帰るとよいでしょう。
- 買い物の順番は、冷蔵や冷凍等の温度管理が必要な食品は買い物の最後にして、購入したら早めに帰宅し、冷蔵庫や冷凍庫に入れるようにしましょう。
家庭での保存
- 冷蔵庫や冷凍庫内の食品の詰めすぎに注意しましょう。詰め込みすぎていると送風口がふさがれて、冷気が循環しにくくなり庫内の温度が上がり食品が傷みやすくなる可能性があります。庫内の目安は、冷蔵庫や冷凍庫の容量の7割程度です。
- 冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫は-15℃以下に維持することが目安です。
- 肉や魚等は、ビニール袋や容器に入れ、冷蔵庫、冷凍庫の中の他の食品に肉汁等がかからないようにしましょう。
下準備
- ゴミはこまめに捨てましょう。
- タオルやふきんは清潔なものと交換しましょう。
- 井戸水を使用している家庭では、水質に十分注意してください。
- 生の肉や魚を触った後などは特にこまめに手を洗いましょう。
- 調理中の生の肉や魚等の汁が、果物やサラダ等生で食べる物や調理の済んだ食品にかからないようにしましょう。
- 生の肉や魚を切った包丁やまな板は、洗ってから熱湯をかけて消毒しましょう。
- 冷凍食品等の解凍は室温で解凍するのではなく冷蔵庫の中や電子レンジで行うようにしましょう。
調理
- 手を洗いましょう。
- 加熱して調理する食品は十分に加熱しましょう。加熱を十分に行うことで、もし、食中毒菌がいたとしても殺菌することができます。中心部の温度が75℃で1分間以上加熱するのが有効です。調理を途中でやめるような時は、冷蔵庫に入れましょう。再び調理をする時は、十分に加熱しましょう。
- 電子レンジを使う場合は、電子レンジ用の容器、ふたを使い、調理時間に気を付け、熱の伝わりにくい物は、時々かき混ぜて加熱ムラをなくすことも必要です。
食事
- 食事の前には手を洗いましょう。
- 清潔な手で、清潔な器具を使い、清潔な食器に盛りつけましょう。
- 加熱済みの料理であっても調理後の食品は、室温に長く放置せずにし、2時間以内に速やかに食べるようにしましょう。
残った食品
- 残った食品を扱う前にも手を洗いましょう。残った食品はきれいな器具、食器を使って保存しましょう。
- 残った食品は早く温度が下がるように浅い容器に小分けして保存する方がよいでしょう。
- 時間が経ち過ぎたら、廃棄しましょう。
- 残った食品を温め直す時も十分に加熱しましょう。目安は75℃以上です。
- においや味など少しでもあやしいと思ったら、食べずに廃棄し、口に入れるのはやめましょう。
手洗いの重要性
ここまでコラムを読み進めてくださった方はお気づきかもしれませんが、手を洗いましょうというワードが何度も出てきます。食品衛生の基本は「手洗いに始まって手洗いに終わる」といわれているほど、手洗いは重要ということです。
手作業の多い調理の場面では、手を介して食中毒を起こす病原微生物を運んで食品を汚染してしまうことがあるからです。そして、その手洗いも適切な方法とタイミングで清潔な手を保つことが大切です。