管理栄養士の山内です。8月も後半になりますが、連日の厳しい暑さはもうしばらく続きそうです。残暑疲れも出る頃なので体調に気をつけながらもうひと頑張りですね。
この暑さの中では食欲が落ちてしまうかもしれませんが、例年、夏を過ぎて涼しくなる頃からは子ども達の食べる意欲も一段と増していきます。乳幼児期は、さまざまな食べ物を味わうことによって味覚が発達する時期です。今回は味覚についてのお話を2回に分けてお伝えします。
味覚とは?
味覚とは、味の感覚のこと。鏡で舌の表面をよく見てみるとブツブツとしているのがわかりますよね。これが味を感じる「味蕾(みらい)」という感覚器官です。この舌の表面や口内にある味蕾でキャッチした味の情報が、味覚神経を通って脳に伝わり味覚を感じるわけです。
赤ちゃんの味蕾は、お母さんのお腹にいる妊娠7週目くらいにできはじめ、14週くらいには大人とほぼ同じ構造になります。味蕾の数は生まれたばかりの赤ちゃんが約10,000個と最も多く、その後加齢と共に減少し、成人では7,500個ほどになるといわれています。刺激物を好んで食べる人や喫煙をする人は摩耗により減少するためその数はさらに少なくなるそうです。味蕾の数が多いほど味を強く感じるため、赤ちゃんや子どもの方が味に敏感ということになります。
5つの基本味
味蕾では、①甘味 ②塩味 ③うま味 ④酸味 ⑤苦味の5つの基本味を感じ、「体に必要なものを教えてくれる味」と「体に危険なものを教えてくれる味」に分けられます。
①甘味…エネルギー源となる糖の存在を教える役割
②塩味…体の調子を整えるミネラルの存在を教える役割
③うま味…筋肉などのもとになるたんぱく質の存在を教える役割
④酸味…腐敗や未熟なものだと教える役割
⑤苦味…毒があるかもしれないと教える役割
甘味・塩味・うま味の3つの味は、体にとって必要なものであることを教えてくれるため「おいしい」と感じる味です。
一方、酸味と苦味は人が警戒し本能的に避けるため「危険」と感じる味と認識されます。特に小さい頃は、その本能を使い安全かどうかをチェックしているので酸味や苦味のある食べ物を与えると始めのうちは口から出してしまうこともあるでしょう。子どもが嫌がるのも当然のことです。
大人になれば自然に何でも食べられる?
本能的に避ける味だからといってこの酸味と苦味のある食べ物を「苦手そうだから食べさせないでおこう」と諦めてしまうのはもったいないことなんです。大人になったら自然と色々な味が好きになって何でも食べられるかというと、実はそうではありません。「おいしい」と感じる感覚は、学習によって育てるものです。
例えば、みなさんも子どもの頃はピーマンの苦味が苦手と感じていませんでしたか?苦手だった苦味が、大人になったらおいしく感じられるようになったというのは、子どもの頃から苦手でも少しずつ食べてきたことによって味覚の幅が広がっておいしいと思えるものが増えたということなんです。
食事経験を積みながらだんだんと慣れていき、脳に味をインプットさせることでこれからおいしさを覚えていく味ですから、慣れるまで繰り返し食事に取り入れてみましょう。色々な味を知り、食べられる味が広がっていくことで味覚はさらに発達していきます。味覚の発達のピークは3~4歳と考えられていて、10歳頃までの味の記憶がその後の味覚の基礎になるともいわれているため、離乳食を卒業した頃からの食生活はとても重要で生涯に関わってきます。子どものうちにたくさんの味を経験し、味覚の幅を広げておくことが味覚の発達につながります。
つまり、子どもの味覚を育てるためには、毎日の食事を管理する家族や周囲の人のサポートが大切です。私達大人が、子どものためにできる味覚の育て方のポイントを次回お話ししたいと思います。