保育園看護師の朝比奈です。第2回目のこのコーナーでは、暑い日に注意すべき「感染性胃腸炎」について書きました。感染性胃腸炎とは、病原微生物がヒトの腸管内で増殖し、胃腸炎症状を引き起こす疾患です。夏場は特に食中毒の発生も多く、食品の取り扱いには特に気をつけたい時期です。しかし、いくら気をつけていても胃腸炎になってしまうこともあると思います。そこで、今回は疾患について触れるだけでなく、ご家庭で困りやすい便や嘔吐物の処理方法などについても触れたいと思います。
感染性胃腸炎の基礎知識
1、代表的な感染性胃腸炎
代表的な感染性胃腸炎として下記が挙げられます。ウイルス性胃腸炎は冬、細菌性胃腸炎は夏に増えることが特徴です。
ウイルス性
- ノロウイルス
- ロタウイルス
- アデノウイルス
細菌性
- カンピロバクター
- サルモネラ菌
- ブドウ球菌
2、感染性胃腸炎の症状
ウイルス性
- 嘔吐を伴う事が多い
- 嘔吐の後、下痢が始まることが多い
- 発熱
細菌性
- 血便
- 腹痛
- 発熱
3、感染経路について
経口感染
ウイルスに汚染された食べ物を食べる事で感染します。
飛沫感染
感染者の嘔吐物が床に飛散した際などに、周囲にいてウイルスの含まれた飛沫を吸い込むことで感染します。
接触感染
感染者の便や嘔吐物に直接触れて手指がウイルスに汚染されると、接触感染が起こります。接触感染は、排便後に充分手を洗わずに触れたトイレのドアノブなどを介しても起こります。
空気感染
感染者の便や嘔吐物が乾燥すると、付託した埃とともに空気中に漂います。これを吸い込んだり、体に付着して最終的に口の中へノロウイルスが侵入することで感染します。
ご家庭でできる、嘔吐時の対応
1、嘔吐後30分~1時間程度様子を見ましょう
嘔吐した後は胃腸が敏感になっており、時間を置かずに何かを口に入れると再度嘔吐してしまう可能性があります。嘔吐をすると、胃液が吐き出されてしまい更に脱水が進んでしまいますので、 嘔吐後30分~1時間程度は様子を見ましょう。
2、嘔吐する間隔が空いたら、経口補水液やお茶を少しずつすすめましょう
30分~1時間程度嘔吐をしなくなったら、「経口補水液OS-1」や「アクアライトORS」などの経口補水液やお茶をすすめましょう。目安は1回5ml程度を10~15分おきです。経口補水液には胃腸内で吸収されやすいブドウ糖や塩分などが配合されており、胃腸への負担も少ないのでおすすめです。少量頻回の水分摂取を行っても嘔吐を繰り返す場合は、医療機関を受診しましょう。
3、水分を取っても嘔吐しなければ、食事を勧めましょう
水分を取っても吐かなくなれば、お粥、パン、うどんなどの穀類から食べ始めましょう。お肉・野菜は胃腸への負担がかかりますので、最初のうちは避けましょう。食べられるようになっても、胃腸の働きはいつも通りには回復していませんので、少量ずつ始めましょう。徐々に量を増やしていき、2~3日かけて元の食事に戻していくのが理想です。
感染を防ぐために出来ること
1、手をしっかりと洗いましょう
ノロウイルスやロタウイルス、アデノウイルスにはアルコールは効きません。日頃から調理前後、食事前、トイレの後など石鹸と流水を使用し手を洗う習慣をつけ、感染を予防しましょう。
2、消毒をしましょう
感染性胃腸炎を防ぐためには、塩素系消毒液(ハイター、ブリーチなど)で消毒を行うのが大切です。環境周囲は0.02%溶液、嘔吐物や便が付着した物は0.1%溶液で消毒します。
食毒液のつくり方
0.02%溶液・・水1L + 塩素系消毒液ペットボトルキャップ1杯
0.1%溶液・・ 水500ml + 塩素系消毒液ペットボトルキャップ2杯
3、便と嘔吐物の処理方法
- 便や嘔吐物を処理する時は、出来るだけ使い捨ての手袋とマスクを着用しましょう。
- 便や嘔吐物はペーパータオルや新聞紙で取り除き、ビニール袋に入れます。
- 便や嘔吐物はペーパータオルや新聞紙をかぶせ、0.1%に薄めた消毒液を染み込ませます。(周囲に便や嘔吐物を広げないように注意しながら、拭き取ります)
※ ウイルスは乾燥すると空気中に漂い、口に入って感染することがあるので、 便や嘔吐物を乾燥させないよう素早く処理するのがポイントです。
受診の目安
- 嘔吐がおさまらず、水分が全く摂れない
- 嘔吐と下痢が同時で続いている
- 元気がなく顔色が悪い
- ぐったりして、ウトウト眠りそうになる。あやしても笑わない
- 皮膚のつやがなく、唇が乾燥している
- おしっこの量が少ない、泣いても涙が出ない
登園の目安
1、明確な登園基準はない
胃腸炎後の登園には、インフルエンザのような出席停止期間が定められているわけではないので、明確な基準はありません。では、どのように症状が落ち着けば登園できるのでしょうか。一般的に考えられる目安をここで紹介していきたいと思います。
2、症状別登園の基準
- 発熱・・発熱がある場合はウイルスの勢いが落ち着いてない証拠ですから、もちろん登園はNGです。丸1日熱が無いことを確認してから登園しましょう。
- 嘔吐・・嘔吐がある場合も、胃腸内でウイルスが多量に繁殖されている証拠です。登園できません。登園の目安は、嘔吐が収まっていて、食事をいつもの量~半分程度食べられていることが条件になります。
- 下痢・・下痢の場合も、ウイルスが多量に繁殖されているサインなので、登園できません。ここでひとつ知っておいていただきたいのが、嘔吐や下痢が落ち着いても1ヶ月程便の中にウイルスが排泄されることがあるということです。そのため、出来る限り元気な時の便回数、性状になるのが理想ですが、便の取り扱いには注意が必要です。