管理栄養士の山内です。私は保育園に出勤すると、調理室に入る前にまず、ご家庭から届く連絡帳にある食事の様子に目を通すようにしています。前日の夜~当日朝まで食欲がいつも通りあったか、離乳食の園児はミルクも含め何をどのくらい食べているか等の情報を共有するためにチェックしています。家庭でのメニューを見ていると、色々な食材を使って手の込んだメニューで感心することも多いです。そして、やはりハンバーグやカレー、うどんやパスタ、焼きそばは子ども達が好きなメニューだと感じます。 一方で、根菜類や海藻類など噛みごたえのある食材の使用は少なめであるという印象もあります。よく噛むことが大事ということはご存知だと思いますが、本当にいいことばかりです。
食材をよく噛むメリット
よく噛むことのメリットとして「卑弥呼(ひみこ)の歯がいーぜ」という標語があります。
ひ | 肥満予防 | よく噛んで食べることで、脳の満腹中枢が働き、満腹感が得られて食べすぎを防ぐことができます。 |
み | 味覚の発達 | よく噛んで味わうことで、食べ物本来の味がよくわかり、味覚が発達します。 |
こ | 言葉の発音がはっきり | 口の周りの筋肉が鍛えられて、口をはっきり開けてきれいに発音できるようになります。 |
の | 脳の発達 | 噛むことによる刺激が脳細胞の働きを活発化させ、子どもの知育を助けます。 |
は | 歯の病気を防ぐ | 噛むことで抗菌作用のある唾液がたくさん分泌され、むし歯や歯周病を防いでくれます。 |
が | がんの予防 | 唾液中の酵素には発がん性物質の作用を打ち消すはたらきが期待できるといわれています。 |
いー | 胃腸のはたらきを促進 | 噛むことで消化酵素の分泌が活性化され、胃腸の消化を助けます。 |
ぜ | 全身の体力向上と全力投球 | 噛みしめると全身に力がわき、ここぞという時にふんばることができ集中力もアップします。 |
あごを鍛えるためには、なんと言っても「噛む回数を増やすこと」です。以前は「固いものを食べると歯が丈夫になってあごが鍛えられる」と言われていたこともありましたが、実際には、固いものを食べるよりも、「噛む回数を増やすこと」がポイントなんです。
子どものあごの発達に適した食材やメニュー
噛む回数を増やすには食物繊維を多く含む食材が適しています。例えば、レンコン、にんじん、さつまいも、ごぼうなどの根菜類やきのこ類、大豆、いんげん、ほうれんそう、小松菜、りんご、柿などがおすすめです。 さらに、骨や歯の成分となるカルシウムを多く含む食べごたえのある食材として、煮干し、こんぶ、わかめなどもオススメです。これらを使用するひじきの煮物やれんこん、にんじんの入った煮物などのメニューが子どものあごを鍛える食事に適しています。ひじきやにんじんは離乳食にも使用でき、乳幼児でも食べやすい食材です。
食べる時に気をつけたいこと
食べ方にも注意して噛む回数を増やす癖をつけましょう。
急いで食べない
噛みしめて味わいながらゆっくり食べましょう。食べ物によって噛みごたえは違いますが、特に噛みごたえのある食べ物は、ひと口30回を目安によく噛んで食べましょう。
飲み物で流し込まない
食べ物が口に入っている間は、お茶や汁物などの水分を摂らないようにします。飲み物で流し込むと、丸のみの癖がつき奥歯ですりつぶして細かくしたり、舌で食べ物をまとめたりすることなく胃に送られてしまいます。
最近増えている低位舌
最近は、舌の力が弱く、舌が通常よりも低い位置にある低位舌(ていいぜつ)の子どもが増えているそうです。通常、口を閉じている時、舌は上あごに接している状態ですが、低位舌では舌が気道をふさぐような低い位置にあります。
・口呼吸でいびきをかく
・いつもぽかんと口が開いている
・くちゃくちゃと音をたてて食べる
・むせやすい
・滑舌が悪い
などの様子がみられる時は、低位舌の可能性も考えられます。
中でも、いつも口が開いているような状態だと、のどが乾きやすく、細菌やウイルスが直接のどに入り感染するために風邪を引きやすくなってしまいます。オーラルケアのメーカーが「お口の健康から身体の健康へ」というフレーズを使いますが、まさにその通りです。その他にも、低位舌は歯並びにも影響があるようです。
少し心配な低位舌ですが、舌の筋肉の発達と舌を動かす操作性が発達することで改善していきます。お子さんが低位舌かも…と思ったら、噛みごたえのある食材を使用し、噛む回数、口を閉じて上手に舌を動かす練習をする機会を増やしてあげましょう。症状がひどいようなら、小児歯科など専門家にアドバイスをもらうようにしましょう。
離乳食から幼児食の時期は、赤ちゃんが大人と同じ食事をできるようになるために大切な時期です。赤ちゃんの歯が生えるきっかけや、噛む力を育てるためにも大切なステップです。目安となる月齢はありますが、あくまで目安なので、お子さんの様子をよくみて、口の動きや舌の動きの発達に合わせ、焦らずお子さんのペースで進めてください。