管理栄養士の山内です。早いもので11月後半です。一ヵ月ほど前はまだ夏の様に暑い日もありましたが、短い期間であっという間に季節が進みました。気候的にも過ごしやすいこの時期は、食欲もぐんとアップするので子ども達の好き嫌いを克服するチャンスかもしれません。そこで今回は好き嫌いを克服するヒントをお話ししたいと思います。
子どもの好き嫌いは成長の証
離乳食を始めたころを思い出してみて下さい。食材を一つずつやわらかく茹でてすりつぶし、裏ごしして一さじずつ食べさせて…。こんな風に手間をかけて大人とは別に用意した食事は、食べ物の大きさや食感が気に入らなくて口から出したり、表情をしかめたりといった反射的な反応をすることはあったと思いますが、それでも比較的よく食べてくれるお子さんの様子に作りがいを感じることもあったでしょう。作り始めは大変だった離乳食も中期~後期を経て完了を迎えると少しずつ大人と同じものを食べられるようになり、食事作りがだいぶ楽になってきたと思います。しかし、順調に進んでいるなと思っていたのも束の間、2~3歳頃からは好き嫌いが出てきて、『口をつぐんだり目を閉じたりして受けつけない』『緑色を見つけるとお皿を押し戻す』『ご飯を全く食べなくて結局バナナだけで済ませてしまった…』など多くのお母さん、お父さん達が子どもの好き嫌いに直面する時期に突入します。
どうして好き嫌いが起こってしまうのでしょうか?人が感じる味覚には、甘味・酸味・塩味・苦味・うま味の5つがあります。そのなかでも酸味は腐敗物を、苦味は薬や毒物を本能的にイメージさせます。酸味や苦味の強いものを嫌がるのは、これらを口にしない方がいいものだと認識しているからなんです。つまり、好き嫌いがあるということ=身体を守る防御反応がしっかりと働いている証拠だと言えます。そんな味の違いを認識できるようになってきたという成長の証です。
子どもの苦手なものを好きに近づけるコツ
火を通して見ましょう
まずは、生の野菜よりも煮たり茹でたり焼いたりして挑戦しましょう。玉ねぎやキャベツなど加熱によって甘みが増すこともあります。
食べやすくしましょう
やわらかく煮たりとろみをつけたりして舌触りをよくしましょう。ただし、全ての食材を離乳食のように細かくトロトロにしてしまうのはおすすめしません。苦手なものや食べにくいものを、噛み切りやすく、飲み込みやすくしましょう。
だしを使いましょう
かつお節、昆布、煮干し、しいたけなどのだしにはおいしさを感じる『うま味』がたっぷりです。煮物などで野菜にこのうま味を染み込ませるとおいしく食べられます。
形を変えてみましょう
人参や大根など型抜きで星型やハート型にくり抜いていつもと形を変えて楽しく食べられるようにしてみましょう。嫌だという気持ちを取り除いてあげると挑戦しやすくなります。
味付けを変えてみましょう
子供が好きなカレーやマヨネーズ、ケチャップなどで味に変化をつけましょう。野菜はごま和えや磯辺和えにするのもおすすめです。また、ただ茹でただけのブロッコリーは食べられなくてもシチューやグラタンに入れると食べられることもあるので、好きなものと組み合わせるのもよいでしょう。
個々に合わせた対応で好き嫌いを克服しよう
幼児期は成長とともに味覚も発達していきます。大切なのは、いろいろな食材や料理と初めての出会いを繰り返しながら少しずつ食べられるようになっていくという過程です。個人差があるので焦らず時間をかけて好き嫌いを克服できるように見守っていきたいです。そして、何より一緒に食べる人がおいしそうに食べていると、子ども達は自分も挑戦してみようという気持ちになります。「おいしいね」「いいニオイがするね」「お野菜の形かわいいね」など声をかけながら家族で楽しく食事をして、苦手なものを少しでも食べられた時はいっぱい褒めてあげましょう。この成功体験を繰り返しながら子どもに自信をつけさせてあげると、いつの間にか食べられるようになっていたという嬉しい成長につながると思います。無理強いをすることなく、時間や心に余裕がある時に少しの工夫をして、親子でゆっくりと好き嫌いを克服していきましょう。