こんにちは、アクタガワの理学療法士、鈴木三恵です。
ぺんぎん保育園には、月2回ほど運動遊びのアドバイザーとして勤務しています。 今回は、運動とは切っても切り離せない関係である「感覚」を使った遊び、「感覚遊び」について解説していきます。
『感覚とは?』
「感覚」と聞いてまず最初に頭に浮かぶのは何でしょうか?「視覚」「聴覚」「嗅覚」といった五感に代表される感覚や、触って温かい、冷たいと感じる「温度覚」などは馴染のある感覚です。
以下に人間が生きる上で活用している感覚を簡単にまとめてみました。
五感
◆視覚…見ること。目で物を見る感覚の働き。
◆聴覚…聞くこと。音を聞き分ける知覚。
◆嗅覚…においに対する感覚。脳に最も近い神経はこのにおいを感知する神経。
◆味覚…味わうこと。五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)を舌で感じる。
◆触覚…触ること。皮膚に物が触れた時に感じる感覚。広義の意味では圧覚、温度覚、痛覚が含まれる。
◇圧覚…圧を感じること。
◇温覚…あたたかさを感じること。温覚刺激が強すぎると痛覚が先に反応する。
◇冷覚…つめたさを感じること。冷覚刺激が強すぎると痛覚が先に反応する。
◇痛覚…痛みを感じること。生きるために必須の感覚。
五感以外の感覚
◆振動覚……振動を感じること。
◆内臓覚……空腹感などの臓器感覚と、痙攣などで痛みを感じる内臓痛覚がある。内臓痛覚は自律神経の働き。
◆前庭覚……自分の身体の傾きやスピード、回転を感じる感覚。
◆固有感覚…関節や筋、腱の動きを検出する、体の位置や動き、力に関する感覚。
これらの感覚は、身体で感じて必ず脳にまで伝達され、どう体を動かすか、どう行動するかを決定しています。私達人間は、常に感覚をフル活用して生きているのです。
『感覚が身体のコントロールを育むポイント』
様々な感覚を駆使して環境に適応し、状況を乗り越える力を発揮することは、大人も子どもも変わりません。ただ、子どもの時期というのは脳が発達途上であるため、大人のように最初から上手に適応することは困難です。子ども時代は世界の探索期でもあります。たくさんの遊びの経験、新しい環境に出会うことで、脳に様々な感覚情報がもたらされ、自分を知り、世界を知り、身体の面でも心の面でもどのように生きていくのかを日々学習します。
中でも、体をコントロールするために必要な身体感覚を育てるのは「触覚」「前庭覚」「固有感覚」です。
触覚
皮膚から感じる触覚により、私たちは自分の身体の大きさや長さ、厚さを把握することができます。これが、ボディイメージです。ボディイメージを把握できると、トンネルを前にした時「ここを自分は通れそうかな?」「どのくらい身を屈める必要があるかな?」「どのくらい足を上げる必要があるかな?」と環境に合わせた体の動きを作り出すことができるようになります。
触覚を育む遊び:粘土、砂・泥遊び、水遊び、ボールプール、サーキット運動等
前庭覚
主に体の「揺れ」「傾き」「スピード」、そして何よりも「重力」を感じるのがこの前庭覚です。耳の奥にある前庭器官(耳石と三半規管)が感知します。頭の位置を常に観測しているため、覚醒状態を保つためにも重要な役割を担っている他、重力に抗して姿勢を保つことや空間認知力、バランス能力にも直結しています。また、回転する感覚が眼球運動をサポートしてくれます。眼球運動は子どもが遊ぶ際の協調運動に欠かせません。もし、「よくつまづく」「床にごろごろすることが多い」「くるくる回っている」などが見られる場合は、前庭感覚が十分に育っていないことが考えられます。
前庭覚を育む遊び:トランポリン、ブランコ、シーソー、ハンモック、バランスボール等
固有感覚
腕を動かしたりする時、私たちは「よし30度くらい曲げよう」とは思いません。そして、実際に曲げた腕を見て「30度曲がってるな」と確認する必要もありません。目で見なくとも、自分の身体の関節がどの程度曲がっているのか、伸びているのか、ということを固有感覚で感知しているからです。この感覚がしっかりと育ち、触覚や前庭覚と統合されることで、全身運動をコントロールすることができるようになります。
逆に関節や筋肉からの情報が不足すると、体の中心である体幹が上手く働くことができなくなってしまいます。固有感覚の発達が十分でない場合、「力加減が上手くできない」「マネすることが苦手」「姿勢を保てずだらだらしがち」というような状態が見られることがあります。
固有感覚を育む遊び:よじ登り、ぶら下がり、荷物を持って運ぶ、手押し車、トランポリン等
感覚遊びの重要性
いかがでしたか?感覚が運動を作り、運動が新たな感覚を作ります。運動の発達を促すためには、こうした感覚を取り入れた「感覚遊び」が重要になります。ぺんぎん保育園では、こうした「感覚」にもフォーカスしたアプローチを日々行っています。ご自宅でも、たくさんの感覚に触れる機会を作っていただけると、子ども達の成長の糧になっていくことと思います。